子ども達の笑顔

岐阜県郡上市八幡町小那比地区にある社会館野外活動センターで8月15日21日の7日間の日程で行われたリフレッシュキャンプ。
ここ福島県郡山市から遠く離れた愛知県名古屋市にある社会福祉法人名古屋キリスト教社会館の支援によるこのプログラムは今年で2年目になります。昨年とは違い今年は参加人数が少なかったのですが、それでも7才から13才の子ども達が小名浜から4名、郡山から7名が参加しました。子どもたちだけの泊りがけのキャンプ、中々この様な機会はないと思います。福島から岐阜までの車での移動は長いし、自然の中でのキャンプは天候に左右されがちです。また、新しい友達が出来るのか、みんなとちゃんと仲良くやっていけるのかなど、見守っている大人たちはハラハラ、ドキドキと言ったところが正直な感想ではなかったかと思います。子ども達が旅立つ時も、初めて長期間に亘って親元を離れる訳ですから、子ども達も見送る大人たちも不安な気持ちであった事でしょう。帰って来る日も、世間ではお盆の時期でありました。道中の道路の渋滞が気になり今か今かと首を長くして、また楽しい時間を過ごしたのかどうか、様々な思いを巡らせながらみんなで待っておりました。しかし、岐阜からの長時間の移動で疲れているのにもかかわらず、車から出てきた子ども達のはちきれんばかりの笑顔にそれらの思いは杞憂であったと気付かされました。子ども達、保護者の皆さん、そして長い道のりを運転して下さりまたキャンプで子どもたちを見守ってくださった名古屋キリスト教社会館のスタッフの皆さまと一緒に短い解散式を行いましたが、昨年出会ったキャンプカウンセラー、スタッフと今年も出会って嬉しかった事、そしてその友情が一段と深まった事、今年出会った新しい友達と素敵な時間を過ごした事、川遊び、ドッチボール、白川郷や恐竜ランドへのバス旅行などその一つひとつがすべて楽しかったこと、そしてみんなで一緒に食べたカレーが、流しソーメンがとても美味しかった事などなど、このまま続けば夜が明けてしまうのかと思うくらい次から次へと子ども達の楽しかった思い出話は止まりませんでした。それを聞いている皆さんの笑顔、そして子どもたちとその貴重な時間を過ごしたスタッフの見守る優しい笑顔は今でも鮮明に記憶に残っております。

思いっきり自然を楽しむ―落ちているきれいな小石を拾ったり、草木に触れたり、流れる川の中で思いっきり遊ぶ。人との出会いを大切にする―出会いによってたくさんの事に気付き、気付かされ、それを大切な成長の糧とすること。この7日間の岐阜でのリフレッシュキャンプはかけがえのない宝物を子ども達に与えてくださいました。

このような素敵な時間を作ってくれた名古屋キリスト教社会館の全ての皆様に心から感謝すると共に、これからも覚え続けてくださること、そしてこのかけがえのないまぶしいばかりの命である子どもたちと一緒に歩んでくだされば、と願っております。

本当にありがとうございました。

 

 

福島原発事故に伴う高齢者施設入所者の避難による死亡リスクは、放射能被ばくによる死亡リスクの400倍

(2015年9月19日福島民報新聞掲載記事より)

原発再稼働に伴い事故時の幅広いリスク軽減策が必要
原発再稼働に伴い事故時の幅広いリスク軽減策が必要

東京電力福島第一原発事故に伴い、高齢者施設の入所者や職員が避難する事によって抱えたリスクを、避難によって回避できた放射能被ばくのリスクと比較すると、約400倍になることを東京大学などの研究チームが米科学誌プロスワンに発表しました。持病や障害を抱える高齢者の急な避難は被ばく以上に負担が大きく、寿命を縮める危険性が高いことを示唆する結果です。

しかし、だからといって「避難しない方が良い」という単純な結論は出せないところが原発事故対応の難しいところです。チームの村上道夫・前東大生産技術研究所特任講師(現福島県立医大准教授)は「負担の少ない移動方法や避難先を準備して、施設で待避できるよう医薬品や食料を備蓄すれば、リスクは軽減できるはずだ」と話しています。

福島第一原発事故の際には、原発周辺の施設や病院の入居者や患者が避難の混乱で死亡する例が相次ぎました。移動に伴う負担や医療やケアの不足、心身のストレスが主な原因とみられています。

川内原発の再稼働に際し、鹿児島県が避難先を決めたのは10㎞圏内の施設だけでした。しかし、福島県の経験を見れば10㎞圏外でも避難せざるを得ない状況が生じる可能性は高く、同時に多くの施設は避難するべきか苦渋の決断を迫られる事になります。
もしまた原発事故が起こり同様の状況が繰り返されれば、施設は避難を選択せざるを得ないと言っています。原発に近い高齢者施設は入所者や職員の安全を確保するため、いくつもの対応策を用意しておかなければならないでしょう。

川内原発を皮切りに日本は原発回帰へと動き出し、私たちはまたいつ原発事故が起こってもおかしくない状況へと戻りつつあります。
再び余命をいたずらに失う事のないよう、福島第一原発事故での教訓を活かし、幅広いリスク軽減策を早急に準備する必要が求められています。

全国世論調査により原発再稼働について反対58%、第一原発廃炉について87%が「順調でない」

(2015年9月20日福島民報新聞掲載記事より)

政府が進める原発再稼働に反対の人が58%で、賛成の37%を大きく上回ったことが、福島民報社加盟の日本世論調査会が9月12、13日に実施したエネルギーに関する全国面接世論調査で分かりました。

再稼働した原発で事故が起きた場合、住民が計画通りに避難できるかどうかについて「できるとは思わない」「あまりできるとは思わない」が計74%に上り、「ある程度」を含め「できる」とした計25%を大きく上回りました。8月に九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が再稼働しましたが、事故への備えに懸念が強いことが浮き彫りとなりました。
再稼働に反対の理由は「原発の安全対策、事故時の住民避難などの防災対策が不十分」(39%)が最も多く、「原発から出る核のごみの処分方法が決まっていない」「福島第一原発事故が収束していない」が続きました。

原発の再稼働や事故時にどこが責任を負うべきかという質問には70%の人が「政府」と答えました。二番目に多い「電力会社」(15%)、三番目の「電力規制委員会」(10%)と大差がつきましたが、責任の所在は曖昧なままです。

又、東京電力福島第一原発の廃炉作業について、87%が「どちらかといえば順調でない」「順調でない」と答えています。
東京オリンピックにあたり、安倍晋三主相は汚染水問題について「状況はコントロールされている」と世界に発信しました。しかし当時から汚染水をめぐるトラブルは続いており、廃炉作業の最大の課題である溶け落ちた核燃料の取り出しについても、いまだに状況を把握出来ていません。

こうした国民の声に耳を傾けず、いったい誰のためのエネルギー政策なのでしょうか?
今、この国の政治は命よりも何か他の物を優先しているということに他ならないと思います。

川内原発再稼働に対する問題点/4.高レベル放射性廃棄物の最終処分場が確保できていない

(2015年4月27日・8月12日福島民報、2015年7月10・11日朝日新聞掲載記事より)

「トイレの無いマンション」―これは、使用済み核燃料を再処理する際に出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場が、日本国内で確保できない実態を浮き彫りにした言葉です。
行き場のない使用済み核燃料は全国に立地する原発のプールにたまり続けており、福島原発事故では極めて危険な状況に陥りました。

現在、国内の原発には約1万4千トンの使用済み核燃料が保管されており、これは、全原発のプールの総容量の70%近くに達していて、限界が近づいています。川内原発は容量オーバーまで約10.7年は運転出来ると試算されていますが、他の原発が再稼働された場合には、10年以内にその半数が満杯になるとされています。最短の中部電力浜岡原発(静岡県)は満杯になるまで約2・3年しかありません。
今後、再稼働させないにしても、今すでにある使用済み核燃料の管理と処分は、環境保全や安全確保の面からも緊急の課題です。

政府は2015年5月に、最終処分場について地方自治体に公募する従来のやり方をあきらめ、国が主導して選ぶ方法に転換しました。今後は科学的な分析に基づき地下深くに埋めるに適した地域を選ぶことにしましたが、各地で「押しつけ」を警戒する声が相次いでいます。

九州電力川内原発(鹿児島県)が再稼働し、今後核のごみがますます増え続ける中で、この問題をいつまでも先送りすることは許されません。福島では、原発事故に伴う指定廃棄物の処分場ですら難航している状況です。高レベル放射性廃棄物の処分は原発のひっ迫した問題であり、解決なくして原発の再稼働などあり得ないことを、私たちは改めて認識しなくてはいけないと思います。

川内原発再稼働に対する問題点/5.事故時の責任不明確なまま

(2015年8月3日朝日新聞・2015年8月12日福島民報新聞掲載記事より)

2015年8月11日に九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働し、阿部政権はこれを皮切りに原子力規制委員会の審査をクリアした原発は全て動かす方針です。

再稼働をめぐり、その責任の所在についてあいまいさが浮き彫りになりました。
原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)は「基準の適合性を審査した。安全だとは言わない」と発言し、波紋を広げました。菅義偉官房長官は「規制委の責任で安全かチェックする」、地元の岩切秀雄薩摩川内市長は「国が決めた基準で審査した結果なので安全だと思う」とし、それぞれが責任を押し付け合うような形になりました。いまだにわだかまりは解けていません。これでは大事故が起きた時、だれに責任を問えばいいのか分かりません。
また、同意が必要な「地元」の範囲も不明確なままで、福島第一原発事故の教訓が活かされているとは到底思えません。
原子力政策は、国策ともいえます。再稼働は首相が最終判断を示し、全責任を負うべきなのではないのでしょうか。

福島の惨状は今も続いています。そして、終わりは見えません。
それに目をそむけた再稼働は、決して許すことは出来ません。

福島の原発事故で受けた苦しみや悲しみを、政府も私たち一人一人ももっと知り、その痛みを新しいエネルギー社会へと向かう原動力に変えていかなくてはならないと思います。

 

福島第一原発で豪雨による汚染雨水流出

(2015年9月10・12・13日福島民報新聞、2015年9月12日朝日新聞掲載記事より)

2015年9月9日と11日、今回の大雨の影響により東京電力福島第一原発構内の排水路から放射性物質を含む雨水が海に流出しました。

流出が相次いでいるのは「K排水路」です。「K排水路」は原子炉建屋周辺の雨水を流すための設備で、港湾外に直接つながっています。放射性物質を含む雨水が流出していることが分かり、東京電力では今年4月に応急対策を実施しましたが、それ以降少なくとも7回流出が確認されています。

福島県から原子力規制委員会に汚染雨水の排出基準を設けるよう求める声が出ていますが、実現する見通しは立っていません。
原子炉等規制法には汚染雨水の取り扱いが明記されていません。原子力規制委は法的根拠がない限り、排出基準を設けるのは難しいとする立場です。「対応するには法律を変える必要があり、かなりの時間を要する」と明かす関係者もいます。

これまでも汚染雨水の海への流出は繰り返されており、東京電力はこの事実を把握しながら今年2月末まで公表していませんでした。
そうした経緯から、漁業者の東京電力に対する不信感には根強いものがあります。
これから台風シーズンを迎える中、さらなる風評被害を生み出さないためにも、東京電力の誠実な対応を願っています。

川内原発再稼働に対する問題点/3.火山対策に対する専門家の異論

(2015年8月12日朝日新聞掲載記事より)

川内原発再稼働について ー火山対策に専門家異論ー
川内原発再稼働について
ー火山対策に専門家異論ー

2015年8月11日に再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)の火山対策について、専門家からは異論が出ており、国内のみならず海外メディアでも懸念の声があります。

川内原発160㎞圏には、活発な活動を繰り返す桜島や阿蘇など39の火山があります。地質調査から、過去に巨大噴火の火砕流が原発近くまで届いていたことも分かりました。火砕流は、原発の設計で対応することが出来ない災害にあたります。
九州電力は、稼働期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分低く、巨大噴火につながりそうな変化を観測すれば運転を止めて核燃料を運び出すとしています。しかし、巨大噴火が日本で起きるのは1万年に1回程度。観測経験がなく、前兆があっても判断できないというのが火山学者の間で広く共有されている認識です。さらに、核燃料の搬出先も未定です。

又、川内原発周辺には、過去に巨大噴火が起きたことを示すカルデラ(大きなくぼみ)が主なものだけで五つあります。
特に、川内原発から約50キロメートルと最も近くにある姶良(あいら)カルデラが噴火した場合被害は大変なものとなり、火山学者から多くの警告が出ています。
鹿児島大学の井村隆介教授(火山学)によると、
「噴火に伴う原発事故の場合、火山灰に放射性物質がくっついて、風に乗って全国に降り注ぐことになります。しかもカルデラ破局噴火の場合、日本最大の地上の火山である富士山と同じくらいの体積の降下物が飛散します。それだけの降下物が放射能を伴って日本中に降り注ぐ可能性を考えないといけません」と言っています。もしそうなれば、日本は壊滅です。

東京電力福島第一原発事故では、未曾有の大きさの津波に襲われました。私たち日本人は3.11を通し、天災は予測不可能であると身をもって学んだはずです。
私は震災を通して、人が予想出来る恐怖はたかが知れており、本当に恐ろしい事は予想を遥かに超えるものだと知りました。
今は静かに眠っている火山がいつ動き出すか誰にも分からない中、経済最優先に動き初めた原発再稼働を傍観していても良いのでしょうか?
未来の平和は、偶然の積み重ねではなく、私たちの正しい選択で創り上げていく強固なものでなければならないと思います。

 

川内原発再稼働に対する問題点/2.各種世論調査で再稼働反対が賛成を大幅に上回った中での再稼働

(2015年7月9日福島民報新聞掲載記事より)

川内原発1号機、燃料装填進む ー再稼働の流れ止まらずー
川内原発1号機、燃料装填進む ー再稼働の流れ止まらずー

2015年8月11日、国民の合意形成がないまま国内で再び原発が動きだしました。

九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が再稼働する前も、国民の間では原発への不安が消えませんでした。日本世論調査会の2015年6月の世論調査では、再稼働に「反対」が63%で、「賛成」31%を大幅に上回りました。このため政府は民意を刺激しないよう、「再稼働はあくまでも電力会社の経営判断」との姿勢を取りながら、水面下で環境づくりを進めてきました。

NHKの全国で行った世論調査では、『川内原発の再稼働に賛成ですか、それとも反対ですか。』という質問に対し、“賛成…32%”、“反対…57%”という結果が出ています。
また、『東京電力の福島第一原発事故を受けて、新しい規制基準が制定されました。あなたは、この新しい基準に適合した原発でも、住民が避難するような事故が起きるおそれがあると思いますか。それとも思いませんか。』との質問には、“あると思う…81%”、“ないと思う…10%”、さらに『原発事故に備えて各自治体が作成する避難計画について、政府は支援を行い、審査までは必要ないとしています。あなたは、このことについてどう思いますか。』という質問には、“支援で十分だと思う…8%”、“支援だけでは不十分で、避難計画を政府が審査すべきだと思う…82%”という結果が出ています。

このように国民の反対の意志が強い中で、政府は個々の原発を再稼働するかどうかの最終判断に政権は関与しないとも説明しており、あくまで事業者の判断に任せています。

(2015年8月25日朝日新聞掲載記事より)

朝日新聞社全国世論調査  川内原発の再稼働「よかった」30%「よくなかった」49%
朝日新聞社全国世論調査  川内原発の再稼働「よかった」30%「よくなかった」49%

又、川内原発の再稼働後に行われた朝日新聞社の全国世論調査(電話)では、川内原発の運転再開について尋ねると、「よかった」は30%で、「よくなかった」の49%が上回りました。原子力発電を今後どうしたらよいか質問すると、「ただちにゼロにする」が16%、「近い将来ゼロにする」が58%、「ゼロにはしない」が22%でした。

反対の世論に向き合おうとしない政権の「見切り発車」を前例にするべく、各電力会社が追随しようとしています。国民の意向を無視し、いったい誰のための原発なのでしょうか。福島原発事故の被災者の苦しみを、身をもって体験して欲しい。そうすれば誰一人として原発を肯定する人はいないと心から思います。

川内原発再稼働に対する問題点/1.避難計画の不備について

(2015年5月5日中日新聞・8月3日朝日新聞掲載記事より)


鹿児島県薩摩川内市にある九州電力川内原子力発電所1号機が2015年8月11日に再稼働しました。
東京電力福島第一原発事故を受けて、原子力規制委員会が原発推進の官庁から独立して安全対策を審査するようになり、審査を通った原発の再稼働第一号となります。
これを機に、国内でほぼ2年ぶりに「原発ゼロ」が終わりました

福島第一原発事故では、避難の混乱で入院患者や高齢者が死亡する例が相次ぎました。原発から4.6㎞離れた双葉病院では、入院患者と系列の介護施設入所者の計約230人が取り残され、搬送の混乱などで19人が死亡しました。
これを受け、国は2012年に防災重点地域を8~10㎞圏から30㎞圏に拡大。災害対策基本法などに基づく自治体向けの手引で、30㎞圏の医療機関や特別養護老人ホームなどの社会福祉施設に避難先や経路、移動手段の計画を作るよう求めました。

川内原発の30㎞圏の医療機関85施設のうち策定済みは2施設。159の社会福祉施設で計画を作ったのは15施設でした。10㎞圏では対象の全施設が計画を作りました。鹿児島県伊藤祐一郎知事は「10㎞で十分。30㎞までは不可能だ」と発言し、今年3月に計画作りを求める範囲を独自に10㎞圏に限定。10㎞以遠の施設は、事故後に風向きなどに応じて県が避難先を調整することにしました。原子力安全対策課は「国の了解を得て決めた」と言っています。

原子力規制委は「(避難計画を)評価する立場にない」(田中俊一委員長)とし、避難計画は再稼働条件になっていません。再稼働への自治体同意についても、立地する道県と市町村だけに限定。他の周辺自治体は避難計画作成を強いられながらも、再稼働に何ら影響を行使する立場にはいません。

福島第一原発事故では住民避難は30㎞圏を超える地域にも及び、様々な情報が飛び交う中で住民は混乱し、心身ともに疲弊しました。その過酷な体験が、今でもトラウマとなっているという方も多くいます。
事故当時目に見えない放射能が迫る中、国の不誠実な対応に何を信じて良いのか誰もが不安でした。避難すべきか留まるべきか、それぞれが決断を迫られました。しかし交通は麻痺、ガソリンも不足し、避難できる人と出来ない人の間で格差が生じました。その時、女性や子ども、病人など弱い立場にいる人ほど、困難な状況に迫られるのを目の当たりにしました。
今、健康被害は事故直後の被曝量が全てだと言う専門家もおり、避難しなかった事で自責の念に苦しむお母さんがいます。また、避難した事に負い目を感じている人もいます。それぞれが、自分の選択が正しかったのか今でもわからず、葛藤を抱えたまま生活しています。

避難弱者が置き去りにされたままの再稼働は、事故の教訓から学ぼうとしているとは到底思えません。「天災は忘れた頃にやってくる」ということわざがあります。私たちはいつまでも、福島第一原発事故を決して忘れてはいけないのだと思います。

 

福島の子、甲状腺がん確定1人増え104人に

(2015年9月1日朝日新聞・福島民報新聞掲載記事より)

2015年9月1日朝日新聞掲載記事
甲状腺がん確定 福島の子1人増え104人に(2015年9月1日朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故による影響を調べる甲状腺検査で、今年4月から6月末までに新たに1人が甲状腺がんと診断されました。これにより、検査対象となる事故当時18歳以下だった約38万5千人のうち甲状腺がんと確定したのは合計104人となります。県検討委員会では「現時点で、放射線の影響は考えにくい」との見解を示しています。

2015年9月1日福島民報新聞掲載記事
甲状腺がん確定、1人増え6人に ー23~27年度甲状腺検査 市町村別結果を公表ー(2015年9月1日福島民報新聞掲載記事より)

この報道について、福島県で最も購読されている地方新聞『福島民報新聞』では3面に大きく取り上げられていますが、『朝日新聞』では最後の社会面に小さく掲載されているのみでした。

1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故後はチェルノブイリ地方で小児、特に女児に多くの甲状腺がんが見られたことが報告されています。一般に小児の甲状腺がんの発生は100万人当たり1~3人といわれていますが、原発事故の2~3年後から急な増加が見られます。そして、被ばく時の年齢によってそのピークが異なり、0~10歳までの乳幼児・小児は被ばく7年後にピークがあり、以後漸減して、1997年以降は通常の発生率に戻っています。10~19歳の思春期では被ばく10年後にピークが見られ、2002年以後は急激に増加しますが、通常の発生率には戻っていません。
しかし、チェルノブイリ事故当初の発症者が少なかったのは、当時の検査に問題があったためとの説もあります。現在、甲状腺がんの発症が福島原発事故の影響によるとは認められていませんが、今後も甲状腺がんを発症する人が増加すれば、認めざるを得なくなるかもしれません。

(2015年9月1日福島民報新聞掲載記事より)

甲状腺検査 将来の患者数推定 ー県が新研究 健康管理に反映ー
甲状腺検査 将来の患者数推定 ー県が新研究 健康管理に反映ー

甲状腺検査をめぐっては、これまで検査結果のみが公表され、将来的な見通しなど詳細な分析はされてきませんでした。しかし、福島県の県民健康調査検討委員会や保護者から被ばく影響の解明を求める意見が相次いでいたため、福島県では甲状腺検査結果を客観的に分析し、地域ごとの発生状況について相関関係の研究を進めることに決めました。甲状腺がんの将来の患者数を予測し、今後の健康管理に反映させる意向です。

福島のお母さん達は、我が子の健康や将来について不安を抱えながら為す術がなく、県外へ避難して行った人がいる中で福島に残る選択をした自分は間違っていなかったのか、心の中で自問自答をしながら生活しています。関係者に原発関係の仕事に就く人がいる可能性や、放射能に対するそれぞれの考え方の違い、様々な利害関係から、不安を軽々しく口に出すことは出来ません。被ばくを避けるために子どもの外遊びを控えたことにより、体力的な問題を心配する声も挙がっています。

この甲状腺検査の新たな研究により、子どもと保護者の疑問が解消され、少しでも不安が払拭されることを願っています。