深刻さを増す福島第一原発事故に伴う除染廃棄物の問題

(2015年8月21・23日福島民報新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物の問題が、様々な新たな問題に直面しています。

環境省では、各自治体が16年度までに除染終了を計画していることから、除染経費について今年度の4153億円から来年度は4500億円程度に増額し作業を進める考えです。中間貯蔵施設についても用地取得が遅れていることから、今年度予算758億円を来年度は1300億円に大幅に増額し、地権者との交渉などを担当する職員も増員する方針です。

除染廃棄物の仮置き場は満杯状態のため、行き場の無い廃棄物を庭に埋める、或は軒下や敷地内に保管するなどの「現場保管」が急増し、福島県内で10万箇所を超えています。
ここ福島県郡山市も例外ではありません。実際のところなかなか除染が進んでいませんが、やっと除染の順番が自宅に回ってきたと安堵しても、その際出た汚染土は自宅の庭に埋められているか、軒下や敷地内に置かれている状況です。
業者が住宅を除染後、その家の庭に深く大きな穴を掘り、ビニールシートで包んだ汚染土を埋めます。汚染土が地中に埋まった庭で、何も知らない子ども達が無邪気に遊んでいる様子を親は複雑な気持ちで見つめているのです。
市内の路上のあちこちで、ビニール袋に包まれた汚染土が置かれている風景を目にします。原発問題プロジェクト事務所付近にあるアパート軒下の汚染土保管場所で放射線量を計測してみると、2μ㏜/hありました。雨の降った次の日や風の強い日は、この数値を超えることもあります。中の汚染土から芽を出した雑草がビニール袋を突き破っています。汚染土を包んでいるビニール袋は、経年劣化に耐えられる強い素材だとは到底思えません。

さらに、東京電力福島第一原発の廃炉に伴う、大量の汚染廃棄物の処分についても見通しは立っていません。汚染廃棄物について政府は「海外のように原発敷地内に埋設処理するのが原則」との立場ですが、既に敷地内は毎日増加する汚染水の保管タンクで埋め尽くされており、廃棄物を仮置きする余裕はありません。そして、これらのタンクもいずれ汚染廃棄物として処分する必要があります。通常の廃炉でも地元の理解を得るのは難しいですが、事故の被害者である県民の理解を得るのはさらに困難が予想されます。

このように増え続ける除染廃棄物を、最終的には福島の人々が背負わされるような気がしてなりません。
豊かさを求め、その影で生み出された負の遺産には目を背け続け、たどり着くのはどのような世界なのでしょうか。
今日も汚染土が増え続ける郡山市では、未来を夢見る子ども達が汚染土の並ぶ道路を歩き、ありふれた日常が過ぎています。