(2015年8月4日朝日新聞掲載記事より)
8月6日は、70年前に広島に原子爆弾が投下された日です。
被爆者の平均年齢は80歳となり高齢化が進み、語り部も少なくなってきています。広島市は昨年から、被爆直後の市内を撮影した映像や写真をみて、当時の模様を次代に語る「体験伝承者」の育成を始めており、被爆2世ら100人を超える人が参加しました。
風化させないために努力が必要なのは、福島も同じです。福島で暮らしていると、震災から今年で4年という短い歳月ですが、すでに風化してきているのを実感しています。
広島、長崎の悲惨な体験を語ることができる被爆者が減っていく中、朝日新聞では約2万2千人の被爆者を対象にアンケートの冊子を送り、5762人から有効回答を得ました。その回答者の7割近い人が「原発に反対」と回答しています。又、福島の原発事故の被災者に対する必要な支援として8割を超える人が「定期的な健康診断」を挙げています。
この結果から、同じ傷を受けた人だからこそ痛みをわかちあい、理解しあえるのだと思いました。
3歳の時に広島で被曝した千葉孝子(73)さんは、結婚や妊娠で差別を受け傷つき苦しんだと言います。福島の原発事故で被災した女子高校生が「子どもを産んでいいのかな」と言ったという報道に触れ、「昔の自分と同じだ」と胸が痛んだそうです。
この記事を読み、私もとても共感しました。私がいつか子どもを産み、もしその子に放射能の影響があった場合、母親としてどれだけ自分自身を責めても足りないだろうと思います。たとえ元気に生まれたとしても、成長する過程で現れるかもしれない。さらにその子の子どもや孫に影響は出ないだろうかと、親として一生不安を抱えて生きていくのだろうと思います。
広島の被爆者の声に耳を傾けていると、福島で放射能と共に生活している私たちの想いと重なる部分がとても多く、福島がこれからたどる道が見えてくるように思います。
今、福島で暮らす人たちも、年々放射能の話題を口に出さなくなってきています。しかし、この問題に深く関わり色々な事を知れば知るほど、口を閉ざし何もしないという事は罪であり加害者と同等なのではないかと次第に思うようになりました。
核を作り出したのも、核に傷つけたれたのも、私たちと同じ人間です。
核を無くすことが出来るのも、私たちなのだと思います。