九州電力川内原発1号機が本日再稼働、9月中旬に営業運転予定

(2015年8月8日・11日朝日新聞掲載記事より)

各地で記録的な猛暑が続くなかで、国内の全ての原発は止まったままにも関わらず、電力供給にはゆとりがあります。

原発を持つ電力9社が7月末に出した今年4~6月期決算では、震災後初めて経常損益がすべて黒字になりました。原発ゼロでも業績が回復傾向にある背景には、火力発電の増加、家庭や企業の節電の取り組み、電力会社以外の「新電力」の新規参入が増えたことによる大手電力需要の減少などが挙げられます。
また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの4年間で10倍近くに急増しました。このことから晴れた日に発電量が多くなる夏のピークに対応し、猛暑続きでも電力供給の安定に繋がっています。

太陽光ピーク時肩代わり
2015年8月8日朝日新聞掲載記事2

2015年8月8日朝日新聞掲載の橘川武郎・東京理科大大学院教授(エネルギー産業論)によると、『需給状況をみれば電力は足りており問題ない。電力不足だから原発の再稼働が必要だ、という説明はもう成り立たなくなっている。だから、電力会社は原発の燃料コストの安さなどを強調している。再稼働を進めようと、最近では電力不足をやや大げさに言っていた面もあったのだろう。』と言っています。

事故時の責任あいまい
2015年8月10日中日新聞掲載記事

本日2015年8月11日に、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が再稼働しました。2015年8月10日中日新聞によると、川内原発周辺には大規模噴火の可能性が指摘されている火山があったり、過酷事故が起きた際の避難計画が規制委の審査対象ではなかったりと、住民からは不安の声が出ています。また、過酷事故が起きた際の責任は、国や立地自治体、電力会社を含め、どこに具体的な責任があるのかはっきりしないままです。

使用済み燃料40トン増 ー川内原発2基、再稼働でー
2015年8月3日福島民報新聞掲載記事

さらに2015年8月3日福島民報新聞によると、九州電力川内原発1・2号機の再稼働によりあらたに発生する使用済み核燃料は計約40トンに上り、貯蔵率は69%から73%前後に上昇すると見込まれるそうです。再稼働に同意した鹿児島県は、県内での最終処分を認めていません。海外のメディアでも、原発の廃炉で生じる廃棄物が今後増えることに触れ、高レベル廃棄物の最終処分政策が危機的状況にあると報じられています。

NHKの全国で行った世論調査では、『川内原発の再稼働に賛成ですか、それとも反対ですか。』という質問に対し、“賛成…32%”、“反対…57%”という結果が出ています。
また、『東京電力の福島第一原発事故を受けて、新しい規制基準が制定されました。あなたは、この新しい基準に適合した原発でも、住民が避難するような事故が起きるおそれがあると思いますか。それとも思いませんか。』との質問には、“あると思う…81%”、“ないと思う…10%”、さらに『原発事故に備えて各自治体が作成する避難計画について、政府は支援を行い、審査までは必要ないとしています。あなたは、このことについてどう思いますか。』という質問には、“支援で十分だと思う…8%”、“支援だけでは不十分で、避難計画を政府が審査すべきだと思う…82%”という結果が出ています。

朝日新聞の調べによると、全国の原発の30㎞圏にある医療機関の66%、社会福祉施設の49%が、避難先や経路、移動手段の避難計画をまだ作っていないそうです。
福島原発事故の際には、救出が遅れた病院で入院患者が体調悪化で相次いで亡くなりました。福島県内の関連死は1900人を超しています。

政府と電力会社の姿勢から、国民の意思を無視し、人命を犠牲にしても良いという本音が見えてきます。原発事故から4年半を経ている現在も、故郷を追われている人の数は約11万人に上ります。現在の福島の人々や自然の状況は、国も電力会社も十全に責任を果たさないことから、全く好転していません。むしろ、弱い人たちがますます弱くされて来ているのが実情です。さらに、福島市や郡山市など、人々が日常を営んでいる地域には、放射線量の高い「ホット・スポット」が場所を変えながら存在しています。見えない恐怖の中での生活を強いられているのです。

福島原発事故の現状と反省を踏まえ、教訓を徹底的に引き出すべきなのではないでしょうか。そして福島の惨事を経験した者だからこそ、伝えていく義務が、私たち一人ひとりにあると思います。

国民一人一人が真実を知り、意志を持ち声をあげること、そして発信していく事が今、私たちに求められているのだと思います。