増え続ける福島の原発避難者の自殺

(2015年8月22日福島民報新聞掲載記事より)

避難者の自殺 悩み解消にさらに力を
避難者の自殺 悩み解消にさらに力を

東京電力の原子力発電所の事故から5年目に入り、住民の避難が長引く中、福島県では自ら命を絶つ人が増えています。

内閣府がまとめた東日本大震災に関連した自殺者数は、平成26年までの4年間で福島県が61人と最も多く、そのほとんどが原発避難者でした。福島の場合その数は年を追うごとに増えており、宮城や岩手と比べて自殺に歯止めがかかっていません。年代別では家族を支える働き盛りの50代が17人で最も多く、次いで60代が13人、80歳以上が11人の順になっています。

避難者にとって、原発事故そのものに加え、家族の離散や見知らぬ土地での暮らし、かなわない帰還、地域の分断など、避難に伴いこれまでの生活に戻れないことが大きなストレスになっています。最近では生活再建を果たす人も目立ち始めており、人知れず孤立感を深めるなどストレス要因は増加していると言えます。

チェルノブイリ原発事故では、四半世紀以上が経った今も住民のメンタル面に影響が残っていると指摘されています。
ここ福島県郡山市でも、報道や周囲の空気から、原発事故の問題が日に日に風化してきているのを感じています。そのような中、福島から目を背けず関心を持ってくださる方に出逢うと、心が温かくなり励まされます。何か優しい言葉や物を与えられるよりも、忘れずにいてくれている事が何よりも嬉しく、感謝している自分がいます。言葉や行動も大切ですが、一番大切なのは“想うこと”であり、誰かの“想い”によって人は傷を癒されていくのだという事に改めて気付かされました。

避難者のストレスは年月を追うごとに個人的になり、より複雑化していくでしょう。
心を閉ざし、孤独に追い込まれていく人を置き去りにして、本当の『復興』といえるのでしょうか。
原発事故により傷付いた人々、その一人一人の心の声に耳を澄まし、理解しようとする気持ちを持ち続けていくことの大切さを感じています。

深刻さを増す福島第一原発事故に伴う除染廃棄物の問題

(2015年8月21・23日福島民報新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物の問題が、様々な新たな問題に直面しています。

環境省では、各自治体が16年度までに除染終了を計画していることから、除染経費について今年度の4153億円から来年度は4500億円程度に増額し作業を進める考えです。中間貯蔵施設についても用地取得が遅れていることから、今年度予算758億円を来年度は1300億円に大幅に増額し、地権者との交渉などを担当する職員も増員する方針です。

除染廃棄物の仮置き場は満杯状態のため、行き場の無い廃棄物を庭に埋める、或は軒下や敷地内に保管するなどの「現場保管」が急増し、福島県内で10万箇所を超えています。
ここ福島県郡山市も例外ではありません。実際のところなかなか除染が進んでいませんが、やっと除染の順番が自宅に回ってきたと安堵しても、その際出た汚染土は自宅の庭に埋められているか、軒下や敷地内に置かれている状況です。
業者が住宅を除染後、その家の庭に深く大きな穴を掘り、ビニールシートで包んだ汚染土を埋めます。汚染土が地中に埋まった庭で、何も知らない子ども達が無邪気に遊んでいる様子を親は複雑な気持ちで見つめているのです。
市内の路上のあちこちで、ビニール袋に包まれた汚染土が置かれている風景を目にします。原発問題プロジェクト事務所付近にあるアパート軒下の汚染土保管場所で放射線量を計測してみると、2μ㏜/hありました。雨の降った次の日や風の強い日は、この数値を超えることもあります。中の汚染土から芽を出した雑草がビニール袋を突き破っています。汚染土を包んでいるビニール袋は、経年劣化に耐えられる強い素材だとは到底思えません。

さらに、東京電力福島第一原発の廃炉に伴う、大量の汚染廃棄物の処分についても見通しは立っていません。汚染廃棄物について政府は「海外のように原発敷地内に埋設処理するのが原則」との立場ですが、既に敷地内は毎日増加する汚染水の保管タンクで埋め尽くされており、廃棄物を仮置きする余裕はありません。そして、これらのタンクもいずれ汚染廃棄物として処分する必要があります。通常の廃炉でも地元の理解を得るのは難しいですが、事故の被害者である県民の理解を得るのはさらに困難が予想されます。

このように増え続ける除染廃棄物を、最終的には福島の人々が背負わされるような気がしてなりません。
豊かさを求め、その影で生み出された負の遺産には目を背け続け、たどり着くのはどのような世界なのでしょうか。
今日も汚染土が増え続ける郡山市では、未来を夢見る子ども達が汚染土の並ぶ道路を歩き、ありふれた日常が過ぎています。

名古屋から福島を想う詩

中部教区報ともしび8月号の『平和のうた』コーナーに掲載されていた、名古屋聖ヨハネ教会の黄金虫さんの作った詩です。

ツバメよツバメ
そんなにうれしそうに飛ぶんだ
セシウムの泥はよしなよ

2015年5月、山階鳥類研究所(千葉県)で全国のツバメの巣を調べた結果、東京や宮城、静岡など13都県の巣から東京電力福島第1原子力発電所事故で放出された放射性セシウムが検出されました。地域別の濃度平均は福島県が一番高く、2番目は千葉県で、周辺土壌と巣のセシウム濃度には関連がみられたそうです。

この報道以来、私はここ福島で空を飛ぶ鳥や巣を見かける度に、放射能汚染の事が頭を過ります。また、原発事故後から、夕方の渡り鳥の異様な鳴き方がずっと気になっています。

私は、放射能から遠く離れた人々が原発の問題を他人事と捉え悪意無く発する心無い言葉に、悲しい想いをする事がしばしばあります。
そうした事が何度も繰り返されるうちに、空を飛ぶ鳥を見て放射能汚染の事を考えてしまう気持ちを、当事者以外が理解する事は不可能なのだろうと思っていました。
その様な中で、福島から遠く離れた名古屋にお住いの方が原発の問題を気にかけ、私たち福島の人と同じ気持ちでいてくれていることがこの詩から感じられ、嬉しく、感謝の気持ちを抱きました。

たとえ当事者でなくても、関心を持ち続け、知識を身につける事で、理解し寄り添うことは出来る。自分自身も誰かに寄り添える人になれるよう、そう信じることが大切だと思いました。
名古屋の黄金虫さん、福島から、心より感謝致します。

沖縄ホームステイを体験してみて

リフレッシュプログラムの一環である『沖縄ホームステイ』に参加し、小学校4年生と年長組の娘さんとご夫婦4人のお宅に4泊5日滞在させて頂きました。
このお宅のお母さんは、郡山セントポール幼稚園と同じ日本聖公会関連の保育所で働いています。お忙しい中、那覇空港までの送迎や観光にご家族皆様でご尽力くださり、おかげさまでとても有意義な時間を過ごすことが出来ました。

うるま市ビーチ
ホームステイ先のご家族に連れって行って貰ったうるま市のビーチ

二人の娘さんもとても仲良くしてくれて、一緒に朝のラジオ体操へ参加したり、二人が今はまっているドラマを見たり、将来の夢や子どもたちの見たことのい雪のお話をしたりと、子どもたちの夏休みのひと時を一緒に過ごすことができました。

ご自宅の向かい側にある公民館では、沖縄の伝統的な『エイサー踊り』を地元の高校生達が熱心に練習していました。滞在中の夜、路上で練習をしているところへ、お母さんが連れて行ってくれました。そこで初めて見た『エイサー踊り』は魂が籠っていて、感動で胸が熱くなりました。

又、最終日の夜には地域の納涼会で保育園の子どもたちと先生方の踊りも見せて頂きました。琉球の踊りにも一緒に参加させて頂き、普通の旅行では味わえないような経験をすることが出来ました。

納涼会
納涼会でソーラン節を披露する保育園の先生達

帰りにはご家族手作りのラフテーやゴーヤのお料理に、石垣島のお土産まで頂いて、沖縄の方々のあたたかさに包まれ別れが名残惜しかったです。
また沖縄か福島で、皆さまに逢える日を楽しみにしています。

リフレッシュ・キャンプ in 岐阜/8月15日~8月21日

岐阜県郡上市八幡町の鮎が泳ぐきれいな川と豊かな緑に囲まれた野外施設で行われるキャンプです。
このキャンプは、名古屋キリスト教社会館の全面的な応援を貰って実現しています。ここ福島県で暮らす子どもたちに、自然の中で思いきり遊んでもらいたいとの願いから始められたもので、今年で2年目を迎えます。
時間の経過と共に、原発事故後の福島の様子はあまり語られなくなってきております。しかしながら、ここに住まう人たちの不安な状況は依然として変わりがないと言わざるを得ません。そのような中、常に覚え続けてくださり、子どもたちを飛びきりの笑顔にしてくれるこのプログラムに心からの感謝をいたします。
たくさんの思い出、たくさんの友だちを作って、このキャンプから元気に帰ってくるみんなを心待ちにしています。

原発事故後から異常な成長を見せる植物

 

当プロジェクトの事務所に隣接されている駐車場に、福島原発事故後異常な成長を見せる楓の木と朝顔があります。楓の木は事故直後除染のため幹を残して伐採されたものです。
2年前に種を植えた朝顔はその後手を加えていませんが毎年芽を出しています。葉の形と大きさが様々に混在し、密集しています。昨年同様、今年もほとんど花を付けませんでした。

土壌の計測値

 

根本の土壌部分は除染をしていなく、2015年8月12日に計測した線量は、1.03μ㏜/hありました。

 

 

 


2015年8月12日、伐採した朝顔の葉と楓の葉を郡山市保健所健康管理課へ持参し、放射能測定して頂きました。
右の資料がその測定結果書です。

朝顔楓測定結果

下記の内容が、計測した担当者より受けた説明です。

『今回計測した放射性セシウム134と137は自然界には存在せず、人口のものである。放射性セシウム134は半減期2年、放射性セシウム137は30年である。
放射性セシウム134が検出された場合、半減期から考えるとチェルノブイリ原発事故や核実験の影響からとは考えられず、福島原発事故が由来だと思わる。また、半減期から放射性セシウム134と137の比率は3:10であり、朝顔の葉から放射性セシウム137が1kgあたり12.2ベクレル検出されたことから、放射性セシウム134は1㎏あたり約4ベクレルで、検出限界値を下回るため不検出となったことが想定される。
ちなみに今回の朝顔の葉と楓の葉は伐採後洗浄していないため、検出された値が表面についた放射性物質か土壌から取り込んだものなのかは定かではない。
また、空間線量計を計測対象物の付近に置いた場合、8,000ベクレル/kg程度以上でなければ反応しないので、今回の朝顔の葉から検出された放射線量では空間線量計は反応しないと思われる。』

因みに、昨年も同様な現象が見られました。

▲約16㎝ある巨大化し様々な形の朝顔の葉(2014年9月8日撮影)

朝顔と楓の葉(2014年撮影)

 

【右】通常の大きさの楓の葉
【左】巨大化した楓の葉

(2014年8月11日撮影)

 

福島では、ニュースやラジオ、新聞で毎日必ず県内各地点での空間放射線量や、福島第一原子力発電所近傍の海水のモニタリング結果が報道されています。

海水のモニタリング結果では『セシウム134、137はND(=不検出)』と発表されますが、これは放射性物質がゼロであったという意味ではなく、測定器の性能などの関係で放射性物質を検出できる限界以下になっているという意味で用いられています。ですから、検出せずと報道があっても、『=安全』とは言い切れないので注意が必要です。

また、郡山市が発表している2015年7月時点の市内の平均空間放射線量は0.10~0.20μ㏜/hとなっていますが、スタッフがガイガーカウンターで計測すると1μ㏜/hを超える場所が複数あります。公的に発表されている空間放射線量が低いからと安心することは危険だと言えます。

目に見えない放射線について捉え方も人それぞれであり、安心させるような情報を日々受けていると、実際に生活していて感じる違和感を打ち消そうとする心が働きがちです。
しかしその小さな違和感こそが、大きな問題の前兆であるのかもしれません。
今後も日々の生活から気が付いたことを主観的なものだからと流さず、丁寧に拾い上げて、このサイトで発信していきたいと思います。

あたたかさに触れて

リフレッシュプログラムの一環である『沖縄ホームステイ』に参加していたセントポール幼稚園の園児を持つご家族が、本日旅行のご報告に事務所を訪ねてくれました。

出発前は、皆様初めての沖縄旅行とのことで、少し戸惑いや不安がある様子でした。このプログラム『沖縄ホームステイ』は、沖縄の幼稚園の先生のご自宅にホームステイをするか、もしくは教会に宿泊し、自由行動が基本です。今回始めての試みとなるなか、皆様に楽しんで頂けるか郡山と沖縄のスタッフ共々心配していました。
そんななか、旅行から無事帰ってこられたご家族から『沖縄の人のあたたかさに感激し、今も熱がまだ冷めません。来年も是非また行きたいです』と感想を頂けたのは、私たちスタッフにとって喜びもひとしおでした。

素敵なお土産まで頂き、事務所に飾りスタッフ共々あたたかな気持ち、そして沖縄の雰囲気に包まれたのでした。

沖縄おみやげ

今、原発避難者が本当に求めている支援とは ー損害賠償に潜む問題ー

(2015年7月30日中日新聞掲載記事より)

届け 原発被災者の叫び
届け 原発被災者の叫び

政府や東京電力は「復興」の名のもと、福島第一原発事故に伴う避難者らに対する被害賠償や住宅支援などの打ち切りを急いでいます。福島県富岡町出身者らでつくるグループは「原発被害者生活支援法」の制定を目指し、国会議員らに訴えるため、被害者の「生の声」を集めてきました。アンケートを集約した小冊子には、『こんな理不尽な扱いには耐えられない』など、好転の兆しが見えない状況に対する避難者の憤りがあふれています。

アンケートで「最もつらかったことは何か?」という質問では、「生活不安」60%、「見通しが暗い」56%、「狭い住居」55%、「家族離散」40%、「失業」33%と続いています。
現在避難指示の対象者には、一律で月額10万円の精神的損害賠償があります。アンケートではこれに対して「生活費として足りない」が87%と多数を占めています。放射線のへの恐怖から一家離散となるケースも回答者の59%を占め、離散による家計への負担も看過出来ません。
富岡町は現在、帰還困難区域と居住制限区域、避難指示解除準備区域が混在しています。自宅が富岡町内にある女性(75歳)は『自宅は準備区域にあるが、近く解体せざるをえない状態だ。しかし国は帰還困難区域のみ手厚い賠償を行い、そのほかの区域への賠償を軽んじている』と訴えています。
被害賠償では「給付」に力点が置かれていますが、被災者間で格差が生まれ人間関係に亀裂が入る状態が起こるなど、その「形態」に問題が潜んでいます。
このアンケートを実施した会の代表者は、『精神的損害賠償打ち切り後、数年にわたり、就職先の無料あっせんや標準的な収入が得られない場合差額分を国が賄うといった「自立支援」が必要である』と訴えています。

私は郡山市在住ですが、しばしば周囲の人との間で、避難者への賠償金について話題にのぼることがあります。たいがいは、賠償金を手にすることで人間関係が壊れたり、勤労意欲が損なわれ破綻している、といった内容です。福島で暮らす賠償金を支払われていない立場にいる人たちが、賠償金が本当の自立支援になっているのか疑問を抱いているのを実感しています。

原発事故後から時間の経過とともに、求められている支援の内容は刻々と変化しています。
本当の「復興」のためには、政府は避難者の置かれている状況や必要としている支援にもっと目を向ける必要があり、そして被災者自身も主張を伝えていく努力が必要なのだと思います。

広島・長崎の被曝から70年、伝えていくということ

(2015年8月4日朝日新聞掲載記事より)

反核の闘い 福島とともに ーおびえる少女は「昔の自分」ー
反核の闘い 福島とともに
ーおびえる少女は「昔の自分」ー

8月6日は、70年前に広島に原子爆弾が投下された日です。
被爆者の平均年齢は80歳となり高齢化が進み、語り部も少なくなってきています。広島市は昨年から、被爆直後の市内を撮影した映像や写真をみて、当時の模様を次代に語る「体験伝承者」の育成を始めており、被爆2世ら100人を超える人が参加しました。
風化させないために努力が必要なのは、福島も同じです。福島で暮らしていると、震災から今年で4年という短い歳月ですが、すでに風化してきているのを実感しています。

広島、長崎の悲惨な体験を語ることができる被爆者が減っていく中、朝日新聞では約2万2千人の被爆者を対象にアンケートの冊子を送り、5762人から有効回答を得ました。その回答者の7割近い人が「原発に反対」と回答しています。又、福島の原発事故の被災者に対する必要な支援として8割を超える人が「定期的な健康診断」を挙げています。
この結果から、同じ傷を受けた人だからこそ痛みをわかちあい、理解しあえるのだと思いました。

3歳の時に広島で被曝した千葉孝子(73)さんは、結婚や妊娠で差別を受け傷つき苦しんだと言います。福島の原発事故で被災した女子高校生が「子どもを産んでいいのかな」と言ったという報道に触れ、「昔の自分と同じだ」と胸が痛んだそうです。
この記事を読み、私もとても共感しました。私がいつか子どもを産み、もしその子に放射能の影響があった場合、母親としてどれだけ自分自身を責めても足りないだろうと思います。たとえ元気に生まれたとしても、成長する過程で現れるかもしれない。さらにその子の子どもや孫に影響は出ないだろうかと、親として一生不安を抱えて生きていくのだろうと思います。

広島の被爆者の声に耳を傾けていると、福島で放射能と共に生活している私たちの想いと重なる部分がとても多く、福島がこれからたどる道が見えてくるように思います。

今、福島で暮らす人たちも、年々放射能の話題を口に出さなくなってきています。しかし、この問題に深く関わり色々な事を知れば知るほど、口を閉ざし何もしないという事は罪であり加害者と同等なのではないかと次第に思うようになりました。
核を作り出したのも、核に傷つけたれたのも、私たちと同じ人間です。
核を無くすことが出来るのも、私たちなのだと思います。

九州電力川内原発1号機が本日再稼働、9月中旬に営業運転予定

(2015年8月8日・11日朝日新聞掲載記事より)

各地で記録的な猛暑が続くなかで、国内の全ての原発は止まったままにも関わらず、電力供給にはゆとりがあります。

原発を持つ電力9社が7月末に出した今年4~6月期決算では、震災後初めて経常損益がすべて黒字になりました。原発ゼロでも業績が回復傾向にある背景には、火力発電の増加、家庭や企業の節電の取り組み、電力会社以外の「新電力」の新規参入が増えたことによる大手電力需要の減少などが挙げられます。
また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの4年間で10倍近くに急増しました。このことから晴れた日に発電量が多くなる夏のピークに対応し、猛暑続きでも電力供給の安定に繋がっています。

太陽光ピーク時肩代わり
2015年8月8日朝日新聞掲載記事2

2015年8月8日朝日新聞掲載の橘川武郎・東京理科大大学院教授(エネルギー産業論)によると、『需給状況をみれば電力は足りており問題ない。電力不足だから原発の再稼働が必要だ、という説明はもう成り立たなくなっている。だから、電力会社は原発の燃料コストの安さなどを強調している。再稼働を進めようと、最近では電力不足をやや大げさに言っていた面もあったのだろう。』と言っています。

事故時の責任あいまい
2015年8月10日中日新聞掲載記事

本日2015年8月11日に、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が再稼働しました。2015年8月10日中日新聞によると、川内原発周辺には大規模噴火の可能性が指摘されている火山があったり、過酷事故が起きた際の避難計画が規制委の審査対象ではなかったりと、住民からは不安の声が出ています。また、過酷事故が起きた際の責任は、国や立地自治体、電力会社を含め、どこに具体的な責任があるのかはっきりしないままです。

使用済み燃料40トン増 ー川内原発2基、再稼働でー
2015年8月3日福島民報新聞掲載記事

さらに2015年8月3日福島民報新聞によると、九州電力川内原発1・2号機の再稼働によりあらたに発生する使用済み核燃料は計約40トンに上り、貯蔵率は69%から73%前後に上昇すると見込まれるそうです。再稼働に同意した鹿児島県は、県内での最終処分を認めていません。海外のメディアでも、原発の廃炉で生じる廃棄物が今後増えることに触れ、高レベル廃棄物の最終処分政策が危機的状況にあると報じられています。

NHKの全国で行った世論調査では、『川内原発の再稼働に賛成ですか、それとも反対ですか。』という質問に対し、“賛成…32%”、“反対…57%”という結果が出ています。
また、『東京電力の福島第一原発事故を受けて、新しい規制基準が制定されました。あなたは、この新しい基準に適合した原発でも、住民が避難するような事故が起きるおそれがあると思いますか。それとも思いませんか。』との質問には、“あると思う…81%”、“ないと思う…10%”、さらに『原発事故に備えて各自治体が作成する避難計画について、政府は支援を行い、審査までは必要ないとしています。あなたは、このことについてどう思いますか。』という質問には、“支援で十分だと思う…8%”、“支援だけでは不十分で、避難計画を政府が審査すべきだと思う…82%”という結果が出ています。

朝日新聞の調べによると、全国の原発の30㎞圏にある医療機関の66%、社会福祉施設の49%が、避難先や経路、移動手段の避難計画をまだ作っていないそうです。
福島原発事故の際には、救出が遅れた病院で入院患者が体調悪化で相次いで亡くなりました。福島県内の関連死は1900人を超しています。

政府と電力会社の姿勢から、国民の意思を無視し、人命を犠牲にしても良いという本音が見えてきます。原発事故から4年半を経ている現在も、故郷を追われている人の数は約11万人に上ります。現在の福島の人々や自然の状況は、国も電力会社も十全に責任を果たさないことから、全く好転していません。むしろ、弱い人たちがますます弱くされて来ているのが実情です。さらに、福島市や郡山市など、人々が日常を営んでいる地域には、放射線量の高い「ホット・スポット」が場所を変えながら存在しています。見えない恐怖の中での生活を強いられているのです。

福島原発事故の現状と反省を踏まえ、教訓を徹底的に引き出すべきなのではないでしょうか。そして福島の惨事を経験した者だからこそ、伝えていく義務が、私たち一人ひとりにあると思います。

国民一人一人が真実を知り、意志を持ち声をあげること、そして発信していく事が今、私たちに求められているのだと思います。