(2015年7月3日福島民報新聞掲載記事より)
国際がん研究機関が、低線量の放射線を長期間浴びることで白血病のリスクが上昇することを発表しました。欧米の原子力施設で働く作業員30万人以上を調査した結果、1ミリシーベルトの被ばくごとに白血病を発症するリスクが3/1000程度上昇することがわかりました。
「低線量被ばく」は症状が表れるまで数年かかるため、被ばくとの因果関係を調査しにくく、国際放射線防護委員会(ICRP)では年間100ミリシーベルトを超えると発がんのリスクが高まると定めていました。
しかしこの結果から、100ミリシーベルト以下の低線量による影響が無視できないことが明らかになりました。
原発事故後、ここ福島県郡山市で暮らす人からも「鼻血が出る、下痢、異常な疲労感」などの体調不良を訴える声がよく聞こえていました。政府はそのような体調不良と放射線との関係を否定していましたが、自分自身の体感からも低線量被ばくとの関係を疑う気持ちはぬぐえません。
チェルノブイリの原発事故が起きて29年ですが、現地では今も原因不明の体調不良で苦しんでいる方がたくさんいます。ベラルーシの子どもたちは、今でも年に1回、甲状腺の検査を受けています。本来、子どもの甲状腺がんは非常に珍しく、小児人口100万人に1〜2人が普通ですが、チェルノブイリ事故後のベラルーシでは、徐々に増加していきました。最初は年に1〜2人増える程度でしたが、5年目になると一気に28人になり、そのあとはうなぎのぼりで95年は90人になりました。
低線量被ばくは影響が表れるまで時間がかかることから、福島で暮らしている人も年月の経過と共に様々な健康上の問題が出てくることが予想されます。
たった一度の原発事故により傷ついた人たちへの心と体のケアは、終わりのない課題になるのだと思います。