放射線測定器を借りてきて思う事

福島県郡山市役所では震災後より郡山市民を対象に、電子積算線量計を1か月間、ガイガーカウンターは1週間希望者に無料で貸出するサービスを実施しています。
私も昨日(2015年7月28日)郡山市役所へ行き、初めて借りて来ました。
電子積算線量計は電源を入れてから電池が切れるまで、1時間あたりに受ける放射線量が常に表示されています。貸出窓口の係員から、電子積算線量計については1ヶ月間毎日、表示された測定値とその日の屋内・屋外活動時間を記録するようにと説明を受けました。1ヶ月後貸出窓口へ電子積算線量計を返却する際に、記録した1か月間の積算線量から1年間の放射線量を推計し、予想される年間積算放射線量をその場で教えて頂けるとのことでした。

震災後、郡山市から郡山セントポール幼稚園に電子積算量計の提供があり、園児全員に配布しました。今は全園児の約半数が身につけて登園しており、幼稚園内では園児の持参した電子積算量計をかごにひとまとめに入れておき、部屋を移動する際にはかごを持って移動するようにしています。

(2015年7月29日福島民報新聞掲載記事より)

建屋カバー撤去始まる
建屋カバー撤去始まる

福島第一原発1号機では2015年7月28日から、原子炉建屋カバーの解体作業を始めました。本来この作業は2年前に始める予定でしたが、工事のトラブルなどで遅れが生じていました。建屋カバーを外すことにより放射性物質の飛散が起こり、空間線量が上がるのではと福島で暮らす方々から不安の声が聞こえています。県外に住む私の家族からも、建屋カバー解体作業予定の報道があるたびに、外出を控えるよう連絡が来ます。
今、原発問題プロジェクト事務所の近辺の定位置で同じ時間に放射線量を毎週3回計測しているので、今回の建屋カバー撤去により空間放射線量に変化があるか、参考になればと思っています。

目に見えない放射線を常に気にしながら生活しなくてはいけない者にとって、ガイガーカウンターや積算線量計は心の拠り所となっています。私の自宅ではガイガーカウンター付の腕時計をリビングのテーブルに置きっぱなしにしていますが、原発廃炉作業のトラブルの報道があったり、大きな地震があった時など、放射線への不安が起こり、ガイガーカウンターに目が行きます。幸い我が家はマンションの4階なので、これまではいつ見ても0.07~0.09µSv/h程度で大きな変化は見られません。小さな腕時計に付いているガイガーカウンターなので、その性能についてもどの程度正確なのか定かではありませんが、私にとってはとても大きな存在となっています。

福島県郡山市には適所にモニタリングポストが設置されており、常に空間線量が表示されていますが、自分で実際にその場所でガイガーカウンターを使って計測してみると、モニタリングポストに表示されているよりもはるかに高い放射線量であることがしばしばあります。
1ヶ月後積算線量計の結果がどのようなものでも、完全に信用することは出来ないかもしれませんが、ひとつの拠り所となると思います。

積算線量計の結果は、またこのホームページでご報告させて頂きたいと思います。

ー福島県知事 欧州訪問ー福島の光と闇を世界に発信

(2015年7月14日~16日福島民報新聞掲載記事より)

2015年7月12日から18日にかけて、福島県の内堀雅雄知事が海外訪問としてスイス・イギリスを訪問し、福島の現状を発信し風評払拭の協力を求めています。

福島県では全国に先駆けて、2040年までに県内の再生エネルギー導入率100%達成を目標としています。スイスは東京電力福島第一原発事故を受け、段階的な脱原発を決定し、2034年までに現存5基の原子炉を廃止し、水力発電や再生可能エネルギーへの転換を目指しています。福島県はスイスのそうした先進事例を参考にし、原子力に頼らない社会づくりを進めようとしています。

福島の原発事故後に原子力撤廃を決定した国はスイスの他に、ドイツ、イタリア、イスラエル、シンガポールが挙げられます。被曝国でありながら原発依存を続けようとしている日本は、世界に遅れをとっています。

今回知事はスイスのジュネーブ、シャンシー・プニー水力発電所、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、そして廃炉予定のミューレベルク原子力発電所を視察しました。
知事はIFRCを訪問した際事務総長に「国も県も市町村もどう原発事故に対応すべきか的確な指示ができなかった」と吐露したところ、シィ事務総長より「正直に『できなかった』と打ち明けることは勇気の要ることで、復興に向けた長い旅の良い始まりだと思う」と連携強化の約束を得ました。
又、ミューレベルク原子力発電所の廃炉は少なくとも15年はかかり、廃炉費用の総額は約1千億円にのぼります。放射性廃棄物は20万トンでそのうち約3千トンは地中深くに埋設する想定です。視察に同席したスイス連邦政府エネルギー庁の長官は、原発の廃炉について「技術的な課題や安全性の確保を最優先に判断するものであり、政治的な問題で決められることではない」と強調しています。

さらに知事はスイスで開催された交流会で「仮設住宅を訪れるたびに『早くこの状態から助けてくれ』との悲痛な叫びを聞いている」と避難者の心情を伝えています。

私は福島県郡山市で暮らしていますが、この地で生活している人達が放射能について次第に語らなくなりつつあるのを感じています。そうした傾向は、我慢強い東北地方特有の人柄と、福島で暮らすことを選択したからには放射能を受け入れるより他には無いという想いから生まれているのでしょう。ある女性は、「自分が住んでいる郡山市について、県外に住む息子からも放射能の問題は収束していると思われている。だが普段歩いている道路は0.5μSv/h前後あるなどホットスポットはあちこちにある。放射能の問題は一生抱えていかなくてはいけないことであり、抱えるものがあまりにも大きすぎる。不安は常にあるが年々言葉に出せなくなっている。」と胸の内を語ってくれました。

しかし、同じ悲劇を繰り返さないために、言葉に出し伝えていく事も大切です。福島で暮らしている者同士放射能にまつわる想いを語り合っていると、たとえひとりの小さな声だとしても、科学的な根拠よりもずっと人を動かす大きな力があるのを感じます。

そしてその声が世界に広がり、福島の闇が光に変わる日が早く来ることを、私たちは願っています。
現地で生活している者だからこそ、分かち合い、助け合っていけるのだと信じて、ひとりひとりが胸に秘めている声をこれからも拾い集め、発信していきたいと思います。

平和の灯 守れる? 印のプルトニウム抽出 容認方針

(2015年7月10日中日新聞掲載記事より)

日本からインドへの原発輸出を可能にする目的で進めている原子力協定交渉で、政府は使用済み核燃料の再処理を認める方針です。
この使用済み核燃料であるプルトニウムは核兵器への転用が容易で、日本が原発輸出国の立場で相手国の再処理を容認するのは初めてとなります。
日本とインドで協定が締結されれば、福島原発の事故後国内での原発新設が困難となっていた東芝や日立製作所など原発関連企業にとっては、急成長しているインドの原発市場への参入が可能になり、大きな追い風となります。

すでに米国とインドで結んでいる「米印原子力協力協定」では、使用済核燃料の再使用を認めています。日本政府内には、インドの再処理容認に慎重論がありましたが、共に原発売り込みを狙う米国が「米印原子力協力協定」で容認しているため、米国に追随して日本も従来の姿勢から大きく踏み出すことを決めたのです。
又、インドを特別扱いして関係を深め、中国を牽制したいという狙いもあります。

国内の原発再稼働、国外への原発輸出のどちらからも、政府が原発を肯定している姿勢が伝わってきます。このままでは広島、長崎、そして福島で原子力の犠牲になった人たちの想いが風化されていく懸念があります。
福島で暮らしている人々から、福島原発事故からの年月の経過と共に、次第に放射能のことを忘れようとしている傾向を感じます。それはこのような日本の政治の方向性から影響を受けているのかもしれません。
今、福島で暮らす自分に出来ることとして、経験した者だからこその声を拾い、残していくことの義務を感じています。

そして平和のために、私たち一人ひとりが声をあげ、大きな声として正しい方向へと導いていく努力が必要なのだと思います。

低線量の白血病リスク ごくわずかに上昇 欧米の作業員30万人調査

(2015年7月3日福島民報新聞掲載記事より)

低線量の白血病リスク ごくわずかに上昇 欧米の作業員30万人調査
低線量の白血病リスク ごくわずかに上昇 欧米の作業員30万人調査

国際がん研究機関が、低線量の放射線を長期間浴びることで白血病のリスクが上昇することを発表しました。欧米の原子力施設で働く作業員30万人以上を調査した結果、1ミリシーベルトの被ばくごとに白血病を発症するリスクが3/1000程度上昇することがわかりました。
「低線量被ばく」は症状が表れるまで数年かかるため、被ばくとの因果関係を調査しにくく、国際放射線防護委員会(ICRP)では年間100ミリシーベルトを超えると発がんのリスクが高まると定めていました。
しかしこの結果から、100ミリシーベルト以下の低線量による影響が無視できないことが明らかになりました。

原発事故後、ここ福島県郡山市で暮らす人からも「鼻血が出る、下痢、異常な疲労感」などの体調不良を訴える声がよく聞こえていました。政府はそのような体調不良と放射線との関係を否定していましたが、自分自身の体感からも低線量被ばくとの関係を疑う気持ちはぬぐえません。

チェルノブイリの原発事故が起きて29年ですが、現地では今も原因不明の体調不良で苦しんでいる方がたくさんいます。ベラルーシの子どもたちは、今でも年に1回、甲状腺の検査を受けています。本来、子どもの甲状腺がんは非常に珍しく、小児人口100万人に1〜2人が普通ですが、チェルノブイリ事故後のベラルーシでは、徐々に増加していきました。最初は年に1〜2人増える程度でしたが、5年目になると一気に28人になり、そのあとはうなぎのぼりで95年は90人になりました。

低線量被ばくは影響が表れるまで時間がかかることから、福島で暮らしている人も年月の経過と共に様々な健康上の問題が出てくることが予想されます。
たった一度の原発事故により傷ついた人たちへの心と体のケアは、終わりのない課題になるのだと思います。

福島原発の凍土遮水壁、年度内完了困難

(2015年7月5日福島民報新聞掲載記事より)

凍土遮水壁 年度内完了困難に
凍土遮水壁 年度内完了困難に

東京電力福島第一原発で増え続ける汚染水対策の切り札は、1~4号機の建屋周囲1.5キロの地盤を凍らせる「凍土遮水壁」です。これは、地下に約1500本の凍結管を埋め込んで冷却材を循環させて地盤を凍らせ、地下水流入を抑える計画です。4月末に試験凍結が始まりましたが、技術的な問題が生じ工程に遅れが生じています。原因を究明し対策する方針ですが、終了時期の見通しは立っていません。年度内の凍結の完了は難しく、このままでは廃炉工程に影響が出る可能性があります。

第一原発3号機燃料取り出し 設備設置難航か 高線量と損傷、作業阻む

又、使用済み核燃料プールからの燃料取り出しについても、2018年に3号機での作業を予定していますが、現場の放射線量が高く難航が予想されます。3号機周辺の空間線量は最高で1時間当たり約220ミリシーベルトと依然として高く、作業を困難にしています。

現在、構内で働く作業員は1日6千~7千人。多くが除染や汚染水タンク増設、凍土遮水壁の工事などの作業に当たっています。事故前の運転中や定期検査のピーク(4千~5千人)を上回る人員規模となっています。
高線量下の作業もあるため、被ばく線量の管理は欠かせません。労働災害も増加傾向にあるといいます。1月にはタンクの検査中の男性作業員が10メートルの高さから落下して死亡する労災事故が発生しました。

事故から4年余りたちますが、現場は過酷な労働環境で、廃炉作業の道のりは険しいことが予想されます。

ベトナム・ヨルダンへの原発輸出について

ロシアが建設する予定のニントゥアン第一原発につづいて、日本が建設する予定になっている『ベトナム ニントゥアン第二原発』。もし事故があれば、隣のカンボジアはもちろん、タイにまで影響が及びますが、予定地の人々に危険性が知らされることなく、すぐ近くに移住して生活することになっています。
原発予定地の周辺の特徴としては、ニンチュア国立公園と隣接・重複しており、絶滅危惧種のアオウミガメの生息地となっています。又、人口18万人のファンラン市が20km圏内にありますが避難計画は不明です。
ベトナムは事実上の一党独裁体制で、市民が国家事業に反対することはほぼ不可能です。既にネット上で反対を表明した人々に、暴力や不当拘束などの圧力がかかっており、国家事業ありきで計画が進行しています。

事故のリスクは工事・運転中共に高く、放射性廃棄物の処理についての見込みもたっていません。さらに福島原発事故クラスの事故が生じたときの損害賠償体制も不明です。
原発輸出は日本の経済成長のためとまで言われ、ベトナムに原発を作るための調査には、5億円の復興予算まで流用されています。現在日本政府は、税金により日本企業の原発輸出を推し進めようとしていますが、これらの公的信用付与の際、放射性廃棄物処理や事故の対応、情報公開などに関して十分な審査指針は現段階では存在していません。
福島第一原子力発電所の事故処理もままならず、避難者の将来の先行きも見えない…様々な問題を抱えても、日本政府は福島で大事故を起こした原発を維持する政策を変えていません。

広島、長崎の原爆、そして福島での原発事故を経験した日本の政府こそが、世界の脱原発をリードできるのではないでしょうか。

福島の子どもたちへ、今すべき放射線教育

福島で暮らしている子どもたちの将来について、差別を受けていると思われる言葉を聞き胸が痛むことがあります。初めて聞いたのは、震災後1~2年経過した頃でした。ある女子高校生のスピーチでの『私は福島県の人としか結婚出来ないと思う』との言葉に驚き、彼女のことをとても不憫に思ったのを鮮明に覚えています。その後年月の経過につれ、そのような将来への不安の声は大きくなっているように感じます。

福島の食 発信したい
福島の食 発信したい

朝日新聞2015年6月25日~28日に掲載されていた連載『いま子どもたちは―こうふく通信―』では、福島県の高校生が原発事故に向き合い、乗り越えようとしている姿が追跡されています。
全国12ヵ所で広がっている情報誌「食べる通信」では、各地自慢の食材と作り手の人となりを伝え、生産者と消費者を物語で繋いでいます。この情報誌を福島県内の高校生が取材し記事を書き、食材と共に定期購読者に年4回送る企画がスタートしました。

この研修を手掛けた東京電力の元執行役員で原発事故前に退社した半谷栄寿代表理事は、「取り返しのつかない事故を起こした責任がある。(参加した生徒の)後輩が憧れ、後に続くような活動にしたい」と話しています。

原発事故 知れば向き合える
原発事故 知れば向き合える

編集部員の一人である高校生の西村知真さん(16)は、本当のことを知りたいという想いから、原発事故について学ぶ市民団体「わかりやすいプロジェクト 国会事故調編」に加わり、国会事故調査委員会の報告書などをもとにした学習や情報発信の活動を始めました。又別の法人が主催するベラルーシへの研修旅行に応募し、チェルノブイリの原発事故後の現地も見てきました。ベラルーシでは、放射能の知識をもとに淡々と語る市民と出会い、どこかタブー視しているように感じた福島と違って正面から向き合っているように感じたそうです。

差別はねのける知識
差別はねのける知識

福島民友2015年6月9日の掲載記事から、高校などを訪問して放射線の授業も行っている東大医科学研究所の坪倉正治医師によると「この4年間、生徒たちから寄せられる放射線に関する質問はほとんど変わっていない。一部には大きな不安を抱えたままの生徒もいる。―将来、県外の人から『福島から来たの?』と差別的な目を向けられた際、それをはねのける強い子ならいいが、そういう見られ方をされて一歩引いてしまう子もいる。その場合、子どもが自ら、将来の可能性や未来の希望を閉ざしてしまうような事態が起こりうる。福島の放射線量の現状を踏まえれば、放射線が直接DNA(遺伝子)を傷つける脅威より、差別的な体験により子どもたちが被る脅威の方がよほど大きいと考える。放射線教育は現状では、外部からの誤った見方に対してしっかり説明できる知識を養い、自分自身のルーツやここでの生活を肯定的にとらえてもらうための情報を提供する教育であるべきだと思う」と述べています。

又、被災した岩手、宮城、福島の3県では社会性の高い活動に自ら取り組む高校生が目立つとも報道されています。原発事故を目の当たりにした福島の子どもたちのために学びの機会を増やし、心の自由を失わず社会の中で自分を活かせる大人になって貰えたらと思います。