月報「コイノニア」
2002年5月号 No.225


イスラームをめぐって(八)

司祭ヨハネ

 この子が成長し、彼といっしょに働くようになったとき、彼は言った、「おお、息子よ、お前を犠牲としてささげよとの夢を見たが、どう思うか」。息子は言った、「おお、お父さん。命ぜられたとおりにお振舞いください。神のご意志なら、私が忍耐強い男であることがわかっていただけるでしょう」。二人が御命令に従って、まずアブラハムが息子を地面に顔を伏せるようにして倒したそのとき、われらは彼に呼びかけて、「おお、アブラハムよ、おまえは夢に忠実であった。このようにしてわれらは、善行にはげむ者たちに褒賞を授ける。これこそ明白な試練というもの」と告げた。われらは、彼を大きな犠牲で贖ってやった。
      (第37章「整列者の章」)

二つの丘の間を往来するサアイの行に関連して、ハガルとイシュマエルの物語を前回見ました。旧約聖書の物語が独特の伝承に置き換えられる例として、もう一つ、石投げ儀礼に関わる物語を見てみましょう。右に引用したコーランの章句が創世記22章のアブラハムと息子イサクの物語に対応することは明らかですが、イスラームの伝承では次のようになっています。
アブラハムは夢で息子イシュマエルを犠牲としてささげよとの神の命令を受け、息子にそれを伝えた。息子は、アッラーの御心なら自分はしっかりとそれに従うと答える。そこで二人はミナーの谷へと向かった。その途中、悪魔が現れ、アッラーと父に反逆するようにとイシュマエルをそそのかした。しかし、信仰あついイシュマエルは石を投げつけて悪魔を追い払い、敢然と誘惑を退けた。この誘惑は三度にわたって繰り返され、彼は三度とも石を投げつけて退けた。やがて目的地に着き、アブラハムがイシュマエルをまさに屠ろうとしたその時、二人の堅い信仰を見届けた神は天使を遣わしてそれをやめさせ、小羊を彼らに贈って息子の代わりに犠牲として献げさせた。
アラブ人の祖とされる長男イシュマエルが旧約聖書におけるイサクの位置を占め、父アブラハムの正しい信仰を受け継ぐ者とされます。ユダヤ教がイサク―ヤコブ(イスラエル)の血統であるのに対し、イスラームはアブラハムの信仰上の直系であるということです。旧約聖書の人物がコーランに登場するとき、書物としての聖書の引用でなく、伝聞に基づくムハンマドのイマジネーションとして語られているようです。
イシュマエルが三度にわたって誘惑を受けたとされるそれぞれの場所に、現在、悪魔(イブリース、サタン)を象徴する三つの石柱が百メートルおきに立っています。10日の朝にミナーの谷へ向かう巡礼者たちは、前日ムズダリファで拾っておいた小石の中から七個をとり、三本の石柱の中央にある「アカバの石柱」に向かって熱狂的に投げつけます。それによって、偶像礼拝に引き戻そうとする悪魔の誘惑を振り払い、信仰を引き締めるのです。
石投げの儀礼を終えると、犠牲として羊、山羊、ラクダなどを神に献げます。アブラハム父子のために神が贖われた犠牲であり、イシュマエルがその身を献げようとしたように、自分もすべてを献げてアッラーに帰依することを誓います。これがイスラーム二大祭の一つである犠牲祭(イード・アル・アドハー、3月号参照)です。メッカに来た巡礼者だけでなく、世界中のムスリムがこの日(ヒジュラ暦第12月10日)に各家庭で動物供儀を行い、その一部を貧者に施します。
供儀を終えた巡礼者たちは髪の毛を少し切り、イフラーム(順礼着)を脱いで俗世に戻りますが、この後も13日までミナーの谷に留まり、三つの石柱にそれぞれ七個ずつ石を投げる儀礼が行われます。


聖霊降臨日礼拝

5月19日(日)は聖霊降臨日。イースター、クリスマスと並ぶ三大祝日の一つ、「主は昇天の後、公会に聖霊を降し、み力によってすべての国に福音を宣べ伝えさせられた」(聖餐準備六)とあるように教会の誕生日であり、宣教開始の日です。大プロセッションを行い、マリア教会名物となりつつある聖歌隊とハンドベルクワイアがご奉仕しました。

また、この日より、聖餐式次第が次のように変更されました。趣旨は、感謝の祭儀(ユーカリスト)としての聖餐式の意味をより明瞭に表現すること、また、聖餐準備の式を大切にすることです。

@聖餐準備の式を前夜に移す。
土曜日の唱詠晩祷に続けて行います。これに出席できない方は必ず各自で準備の式を行って主日聖餐式に臨んでください。主日は直ちに参入唱から入ります。

A陪餐の「近づきの祈り」を省く。
「憐れみ深い主よ・・・」は文語聖餐式文でなじんだ祈りですが、個人的色彩が強く、現行式文の流れにそぐわないものがあります。これを省いて直ちにアニュス・デイ(世の罪を除く神の小羊)に入り、同時にチャンセル上の陪餐を始めます。オルガニストはその後に単独で陪餐します。(「近づきの祈り」を全員では唱えませんが、陪餐の前に各自が心の中で唱えることは有意義でありお勧めします)。

B陪餐唱は早めに、番号アナウンスなしに歌い始める。
会衆の陪餐が終わりに近づき、聖品が不足しない見極めがついたら、司祭の合図でオルガニストが陪餐唱の前奏を弾き始めます。タイミングはその日の状況によって異なります。週報の聖歌番号に従ってあらかじめ聖歌集を開いておいてください。

C遅れてきた人は祈祷書持参で最後に陪餐する。
何かの事情により懺悔・赦罪をまだ受けていない人は、祈祷書を持って陪餐者の列の後尾について進み、(複数いる場合は一緒に)懺悔し赦罪を受けてから陪餐します。(祈祷書170―171頁)


芦生キャンプ場の紹介

聖マリア教会は京都府北桑田郡美山町にキャンプ場を持っています。この土地は由良川のほとり、自然豊かなところにあり、広さは3000坪あり、1973年頃に購入しました。水道も電気も通っていないところですが、湧き水を引いてきて自然の水道を作ったり、資材小屋を手作りで作ったり、発電機や重機を持ち込んだりと、ボーイスカウト二四団の隊員を中心に、若い信徒も協力して、便利に使えるように整備して来ました。
 5月には「のんびりキャンプ」と称してゴールデンウイークの渋滞逃れに、夏休みにはジュニアチャーチ、ボーイスカウト各隊の夏期キャンプ、9月には夏季キャンプの疲れを癒す「ほっこりキャンプ」と、それぞれフルに活用しています。冬を迎える前には「冬支度キャンプ」を催し、美山の大雪に耐えられるよう、小屋に突っ張りをしたり、一年分のトイレを酌んだり、ゴミ穴を掘ったり、小屋の補修をしたり、また、日帰りでも作業をしたりと、大事に管理、バージョンアップしています。
 今年も、5月3日(金・祝)から5日(日・祝)まで恒例の「のんびりキャンプ」が行われました。近隣の住民の方、区長宅に一年間お世話になるご挨拶もすませてきました。また、今年は芦生キャンプ場において、大塚勝聖職候補生の司式により約30名の人々が主日礼拝を守りました。


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