豊かな日本
ヴェロニカ 藤田伸子
この夏は,カンボジアへ行きました。アンコールワットの遺跡を見たかったのです。密林の中の遺跡は,こわれかけているとは言え,神々しい感じでした。壁面のレリーフも美しく,当時の文化の高さがうかがわれました。
「素晴らしい!」という感動に浸る間もなく,遺跡の出口には土産物を手にした小さな子ども達の姿が。私達が日本人であると、どこかで見分けているらしく「5せんす(扇子)1ドル」と売り物の扇子で扇ぎながら話しかけてきます。中には裸足の子もいて,どうしたものかと困惑しながらも追い払ってしまいました。
クーラーをきかせた部屋で、好きなことをして過ごせる日本の子ども達とは大きな違いです。
売り物を持っている子はまだいい方で,手のひらを大きくひらき,物乞いをする子たちにも遭遇しました。その昔トレンサップ湖という大きな湖がアンコール王朝を支えていたと考えられています。カンボジアは雨季と乾季があるので,今でもお米は年に一回しか作れません。乾季に大切な水を供給できるこの湖は良き漁場として,また水上生活の場として今も大いに役立っています。トレンサップ湖クルーズがあるというので出かけました。
遺跡のあるシェムリアップの町から車で30分。町から離れるに従って道幅が狭くなり,舗装もないでこぼこ道となりました。車窓の風景も建物が少なくなり,田んぼや沼地が広がります。時折小さな集落を抜けていきますが,毒蛇や暑さから身を守るための高床式住居がだんだんと掘っ立て小屋のようになってきます。
船着き場というより、やっと辿り着いた岸辺から船に乗り換えクルーズです。たくさんの小さな水上住居が浮かんでいます。「水上に何でもある」とガイドさんは胸を張ります。学校も教会も水上に浮かんでいました。ドライブイン(クルーズインか?)もありました。水上といっても岸辺に近いところに繋留してある感じ。住所もあり、郵便も届くとか。狭い住居ながら、犬などペットの姿も。屋根にはテレビのアンテナがたっているお宅も。(電源は車用のバッテリーとのこと)もちろんトイレは水洗。とても不思議な世界でした。
どこまでも果てしなく広がる湖。日本人にとっては海の感覚です。沖合で船はエンジンを止め、ちょっとのんびり。360°の水平線。ツバメが水面ギリギリを飛び交っています。目をこらすと水面にまるい物が浮かんでいます。心なしか動いている、近づいてくる感じ。何だろうと思っていると、物乞いでした。たらいのようなものに乗り、両腕で一生懸命に漕いでいるのです。ちゃあんとクルーズ船の停泊する場所を心得ていて、追いかけて来るのです。
カンボジアは義務教育がないそうです。「学校に行かなくてもいい。」なんて聞いたら日本の子供達は大喜びするかも知れません。でも、この貧しさから抜け出すためには、やはり学校が必要なのだろうと強く思いました。だんだん学校の数も増えてきているとのことですが、この国が豊かになるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。
世界遺産アンコールワットは、大きな収入源なのでしょう。空港も今年4月に改装したばかりという新しさ。町のあちらこちらにホテルも建築中です。韓国や中国からの旅行客も日本人よりたくさんいました。欧米の方々は、ゆったりと旅しているようでした。
日本には日本の様々な問題がありますが、やはり今の日本は豊かなのです。それも相当に。この豊かさを実感できないのは何故なのでしょう。
教会的に考えると「心が貧しいから」と簡単に答えたくなってしまいますがもう少し深く考えてみたいと思います。
《ほっとひといき》
何だかまとまらない文章を書いてしまいました。暑さボケとお許し下さい。帰国して、日本の暑さに驚きました。雨期のカンボジアは朝に夜に大量の雨が降り、そんなにはつらくない暑さでした。
一方、日本は照りつける直射日光、コンクリートの照り返し、避暑に出かけたくなります。
それでも夜には虫の声が。季節は確実に秋へと移っています。
秋と言えば稲刈り。日本のお米もカンボジアのお米も豊作でありますように。
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