アイデンティティー
マリア 小島佐和子
下館聖公会に参加し始めてまだ日が浅いのですが、今回藤田さんから原稿のお話をいただきまして、1年8ヶ月滞在したカナダのトロントについてお話させていただきます。

大学では欧米文化を専攻していたにもかかわらず、英語は全く話せず。いつか海外で仕事をしてみたいという夢だけは大きく、やっと社会人になってから英語の勉強のためカナダに行きました。そこで、英語以上に学んだことがありました。

多様な移民国家のカナダそして最大都市トロントは、ヨーロッパ、中東、アジアの文化を知るチャンスがたくさんありました。最初に通ったビジネス英語学校のクラスでは、私一人が日本人で、他は全員韓国人。日本以上に、韓国では就職にTOEICのスコアが重要視されているようです。そのため、普通の英会話学校よりも、スキルアップのための学校は韓国人留学生でどこもにぎわっています。たまに韓国語ばかり話す留学生がたくさん集まると、ここはどこだった?となんだかおかしな気分になったりもしました。

これは、韓国人にかかわらず、トロントでは、たくさんの国のタウンがあり、そこに行けば各国の言語が飛び交っています。その中でも、チャイナタウンは最大。トロントには2個所もあり、郊外に行っても、どこでも見つかります。

たいていの国の人達は集まって住んでいるためストアもコミュニティーも充実していますが、日本人街はありません。それは、世界大戦の時に、日系移民は、集団で住むことを許されなかったからだと聞きました。日本での、また近くのアジアでの戦争のたいへんさは、祖母や学校から学びましたが、その時遠く離れた日本人のたいへんさはまったく盲点でした。太平洋側のバンクーバーに住んでいた日系移民は財産を没収され、トロントへの強制移動、そして心細いながらも、仲間と離れてまた一からのスタート。私の教父母になってくださった中渡瀬誠子さんはいろいろと日系移民のお話を教えてくれました。

スクールが終了した後、プライベートキャリアカレッジの本社でインターンシップを体験しました。社員はほとんど移民。ポーランド、ポルトガル、フィリピン、エジプト、ラオス、ニュージーランド、イタリアなど、みんな家族や個人で移民権を取得してカナディアンになった人達です。

そのような移民から、先祖がずっと昔に移民をし、生まれも育ちもカナダというカナディアンまでさまざまです。そんなカナディアンはそれぞれのバックグラウンドを持ちながらも、アメリカに対する意識もよくも悪くもかなりのものです。常にライバル意識を持っているという感覚でしょうか。これは、知り合った友人ほとんどがそうでした。アメリカとは歴史も文化も似ているように見えていた私でしたが、これはたいへん失礼でとても印象的でした。

教会で聖書を勉強しはじめたころ、トロント日系聖公会のウィルソン司祭にあなたのアイデンティティーは何ですかと質問されたときに、仏教家庭に育った私は、お墓参りやお線香をあげることは日本人として続けるべきだと、何者かと最初に考えたら日本人であると主張していました。

それが、神様、イエス様に本当の意味で出会った時、以前思っていた私のアイデンティティーは変わりました。日本人である前にまずは神様の子であるということ。それがわかったときに初めて、家族も親戚も友人もみんな同じ距離で見れたことになぜかとてもうれしく思いました。

アイデンティティー、普段はあまり意識しない言葉ですが、自分自身をしっかり見つめるために実はとても重要なことだと思います。多様な移民で成り立っているカナダでそれぞれが独自の文化を尊重しつつ、他国出身の人達と共存していくこと。それは、簡単なことではありません。その根底に、人間はみな兄弟、姉妹であるというより深いアイデンティティに気づいている人達がカナダという国をまとめている理由のひとつではないかと思いました。




《ほっとひといき》                ヴェロニカ 藤田伸子
 今回はニューフェイス、小島姉にお願いしました。お忙しい中、快くお引き受け下さり、ありがとうございました。メールでいただけたことも感謝です。
日系移民の戦後など暮らしてみてこそ分かることをお伝えいただき、興味深く読ませていただきました。多民族国家への知恵は近い将来日本にも必要となることでしょうね。近々、海外へ出発されるとのことですが、落ち着きましたら現地からのお便りも楽しみにしています。
 次回は佐藤兄です。どうぞお楽しみに。
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