温泉三昧
ヴェロニカ 藤田伸子
この夏は、温泉巡りをしました。昨夏のカナダ旅行で徳島に知り合いができました。「一度、阿波踊りを見に来て下さい。」という社交辞令に、図々しくもお邪魔してしまったのでした。

四国の夏は暑い。その昔、ため池をたくさん作らねばならなかったことを、小学校で習いました。徳島は人口80万人の大都市。夕方近くになるとあちこちで鳴り物の音が聞こえ始めました。

大きな通りに沿っていくつか演舞場が設けられ、阿波踊りを見学できるようになっています。約二時間の間にひっきりなしに有名連(踊りの集団、お互いに切磋琢磨しているようです)が通り抜け、お客を楽しませてくれます。時には芸能人も紛れ込み、握手を求める人が殺到していました。
そんな中に小学生の連がありました。どうやら総合学習の発表の場となっているようです。先生方も一緒に踊っているようでした。ご苦労様、と思ってしまいました。

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損!」と言いますが、素人の踊りと地元の方々の踊りは一目瞭然。女踊りは一糸乱れず美しい。男踊りは力強くダイナミック。私達夫婦は見る阿呆に徹してしまいました。徳島県民の阿波踊りにかける気迫に圧倒された一夜でした。
この晩は市内には宿がとれず、鳴門温泉に泊まりました。海も美しく、鳴門大橋や海峡を行き交う船を眺めながらの露天風呂は最高でした。
翌日の宿は琴平温泉です。まずは金比羅参り。1368段の階段を一気に上りました。クリスチャンだけれど…と躊躇しながらも、とりあえずは拍手を打ち、お賽銭を献げました。

旅の目的の2つめは讃岐うどんにありました。NHKの番組によると「るみばあちゃん」という90才をすぎた老女がうどんを手打ちしているというのです。インターネットで見つけ出した地図をたよりに訪ねてみました。テレビの反響かすっかり有名になり、店(製麺所)の外まで行列が出来ていました。入り口にたどりつくと、るみばあちゃんの元気な笑顔。テレビより若いと思ってしまいました。中には「8月の目標、暑さに負けない」という受験生のようなめあてが張り出してありました。お弟子さん?と見受けられる男の方2名が働いていて麺をゆでたりしていました。全てはセルフサービス。天ぷらうどんにして2人前410円の安さ。コシがあり、おいしいうどんでした。

三泊目は道後温泉。日本最古の温泉です。あの「坊っちゃんの湯」にも入りました。重要文化財として指定されている道後温泉本館は、三階建ての銭湯です。アニメ映画「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルだ!と感激してしまいました。

徳島を案内してくださった方が別れ際に一冊の本をプレゼントして下さいました。『アヴェ・マリアと梵天の子供達』です。筆者は徳島在住のお医者様、香川宜子さん。音楽を通してのアウシュビッツ、徳島のドイツ人捕虜という事実も盛り込まれ、なかなか興味深いストーリーです。普段小説は読まないのですが、帰りの飛行機の中で一気に読み通してしまいました。

温泉三昧で宮城県沖の地震も知らずに帰郷。東京駅の新幹線大混乱で現実に引き戻されました。関東もまだまだ暑い。さあ、残暑と闘うぞ。
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