今年も,ヴェロニカの咲く季節となりました。自分のクリスチャンネームがこの花の名前でもあることを知ったのは,昨年のことでした。
司祭様からいただいた『いのちの響きあい』に,次の歌がありました。
陽溜まりにヴェロニカの花を見出せば病癒えたる吾が春の来る
憩泉
いったいどんな花かとワクワクしながら読んでいると,早春に咲く薄紫の花,和名でいうところの「イヌフグリ」であることが分かりました。
高校生の頃でしょうか。山あいの梅林に群生するイヌフグリを見て感動したことを覚えています。白梅も満開で美しかったのですが,梅林の地面いっぱいにヴェロニカが咲き乱れ,まるで空の色をうつした絨毯のようでした。一つ一つの花はとても小さいのにすごいと思いました。
ヴェロニカという洗礼名を選んだのは,彼女の勇気にあこがれたからでした。ヴェロニカはイエスが十字架を背負い,ゴルゴタの丘まで登らされた時,苦しむキリストに歩み寄り,泥と唾と血のしたたる彼の顔を自分の額をおおっていた布で拭ってやった(遠藤周作著『聖書の中の女性たち』)とされています。
群衆のほとんどがキリストをののしっている中,自ら近寄れる勇気に脱帽という感じでした。ひょっとしたら,他にも助けたいと思っていた人が群衆の中にはいたのかもしれません。でも実際に行動をおこしたのはヴェロニカだったのです。
社会人として働きだしたばかりの頃だったので,自分が正しいと思ったことを行動にうつせる勇気を欲していたのかも知れません。
そして十数年経ちました。相変わらず勇気のない自分がいます。むしろ,ひたむきに勇気をと願っていたあの頃の方が,強い気持ちを持っていたようです。
強い西風が吹きすさぶ時期に,地面にはいつくばりながらも可憐な花を咲かせるヴェロニカ。その名に負けないよう,しなければならないことをしていく強さを追い求めていきたいと思います。
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