礼拝諸式
聖餐式
2059  旅人らのこのみ糧
O esca viatorum
Maintzisch Gesangbuch, 1661
NAGUNAE OE YANGSIK
Geonyong Lee (1947-)
(訳詩 渋澤博子、訳詩協力 香山洋人、キム・フナ)
 韓国の聖公会聖歌集『ソンガ』(1990年)から採られた、聖餐式の歌です。
 この世を旅する者の糧、天使のパン、天からのマナである主のみ体と血によって、わたしたちが満たされ、渇きは潤されることを、心からの叫びとして力強く歌います。聖餐式における奉献聖歌として、また陪餐後の聖歌として、ふさわしく用いられるものです。
 作者不詳のこの詩は時代を遡り、1661年にドイツの賛美歌集に収められていたことが分かっています。その時のタイトルは「まことの天のパンへの聖歌」でした。オリジナルのラテン語の詩は、それ以前のものと考えられています。それが韓国語に訳され、『ソンガ』に収められる際に新たに作曲されました。
 作曲のイ・コニョンは、現代の韓国を代表する作曲家の一人で、アジアの教会音楽家としても、世界的に知られています。大韓聖公会の聖歌集改訂委員でもありました。また、『増補版』12番「来ませ来ませ」の作者としても知られている彼は、1999年から半年ほどの日本滞在の折に、「聖フランシスの平和の祈り」と「主の祈り(共通訳)」の二つのアンセムを作曲しました。それらは、日本聖公会にささげられました。
 『ソンガ』以前の韓国の聖歌集は、日本の『古今』と同様、欧米の翻訳聖歌中心のものでした。しかし光州事件を経験した教会が、社会をリードする役割を担うべきことに目覚め、民衆の思いを自分たちの言葉によって、韓国に伝わる民族音楽を意識した聖歌を次々に生み出してきました。イ・コニョン自身も、聖歌集に関わる前は、西洋音楽の手法のみで音楽を作っていたと言います。この聖歌は、素朴なメロディーに韓国を感じさせる和声が大変新鮮で、人々の心から湧き出るような力がこめられています。
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