教会暦
大斎節
2039  十字架にかかり
Stabat Mater dolorosa
Latin, 13c.
STABAT MATER DOLOROSA
Maintzisch Gesangbuch, 1661
(訳詩 植松 誠)
 『古今』91番の改訂訳です。
 この歌は「スタバト・マーテル」(御母はたたずむ) と呼ばれ、中世後期から礼拝で用いられるようになりました。18世紀初頭のローマ・ミサ典礼書では、聖母マリアの記念の日 (特に「聖母の七つの悲しみの日」の二つの日) に歌われ、大切にされてきました。この聖歌がどのように用いられてきたのか、また作詩者は誰かについては種々の説があり、複雑な経緯を持つ聖歌ですが、十字架のイエスをその下で見守る聖母マリアの悲しみが切々と歌われ [ヨハネ19:26] 、その心情の描写、リズムの美しさなどから、他の言語には翻訳できないと言われるほどのすぐれたものです。
 彼女はシメオンに預言されたように、自身の心を剣で刺し貫かれました [ルカ2:35] 。しかし、イエスの死は人類の救いという神の愛の業であり、聖母マリアの姿は、十字架に対するわたしたちの信仰をじっくりと奮い立たせます。
 聖週の聖金曜日(受苦日)にしか歌われなかった『古今』91番ですが、これからは広く親しまれますように。
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